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池本の考え

第四回

お酒の数字

よく 弊社に、
お酒のスペック――“数値”(日本酒度、酸度、アミノ酸度 など)について、
お問い合わせが寄せられます。

お願いですから、訊かないで下さい。
私も よく知らないし、覚えてもいないのです。

ディスクロージャー : 情報公開。

世間に対する、蔵元なりの「ディスクロージャー」だったのでしょうか。
15年ほど前からだったと 記憶していますが、
日本酒度、酸度、アミノ酸度などと言った“数値”を 公表されることが 多くなり
「日本酒度+4.5、酸度1.8、アミノ酸度 1.6」といった風に、
お酒の味を “数値”で 表される事が多くなりました。

さて それでは、
「日本酒度+4.5、酸度1.8、アミノ酸度 1.6」のお酒って、
つまり どんな味でしょうか。

酒類鑑定官(国税局の醸造技官)や、往年のベテラン杜氏ならいざ知らず、
私も 端くれながら蔵元杜氏をしておりますが、
正直申しまして、私には 想像つきません。

偉そうな発言をお許しいただけるなら、ひとこと 言わせてください。
「あんまり 当たってませんよ、“数値”。」

偶然ですが、
過去には 弊社 最高峰の『大吟醸』 と 一般酒の『上撰』が、
全く同じ数値になったことがありました。

…ということは、『大吟醸』=『上撰』 なのか と聞かれますと、
もちろん そんなはずはありません、
口に含めば、(“数値”は一緒でも) 味は 全くの 別モノです。

 

数字が表すのは 凡そ その程度の事だ、と 考えています故、
私は数値を まったく重要視しておりません。
従いまして、弊社では数値は 公表いたしておりません。

(※アルコール分など、酒税法で表記が義務付けられているものは
例外なく 公表いたしております。)

そもそも これら“数値”は 杜氏や蔵人たちが
醪を管理する上では 有意義な情報でした。

即ち、醪を濾して 濾液を採って、それに 浮標を浮かべて液の比重を測り、
お米の溶け具合や 酵母の醗酵状態を測り知ることができますし、
色の着いた試薬を入れて、色の変り具合で酸度などを測り知ることができ、
醪の「健康診断」や、搾るタイミングを判断する材料として役立ちます。

しかし 弊社の場合、いったん 醪が搾り上がって お酒になれば、
その後(アルコール度数以外の)数値を 測ることは 一切ありません。

従って、私自身 よく知っていないのですよ、
うちのお酒を“数値”で表せば、どれくらいの数字になるのか。

そんな事は どうでもよくて
それより、もっと“生きた言葉”で お酒の味を お伝えしたいのです。
「華やかな香りが高く、ほんのり甘い旨みが口いっぱいに広がります」とか、
「きめ細かい味わいを持ち、派手さはありませんが お行儀のよいお酒です」とか、
「リンゴの蜜のような、鼻の奥の粘膜に染み入るような濃醇な香りがあります」
…と 言った感じでです。

そもそも 嗜好品であり、
人によって味の感じられ方が異なる お酒を、
このように 主観的な言葉や表現で 伝えようとすると、
どうしても 独りよがりになり勝ちで とても難しく、

それよりは
客観的かつ 絶対的な“数値”で 伝えた方が 間違いもないし、楽です。

しかし、「日本酒度+4.5、酸度1.8、アミノ酸度 1.6」と 伝えて、
それで お酒の味を説明した気になっていては いけないでしょう。

最後に、私が 特に尊敬する蔵元のひとつに
「満寿泉」というお酒を醸される、富山の桝田酒造店さんを挙げます。
ここまで私が 長々と書き綴ってきた文章を、見事にまとめた、
その蔵元の お言葉を拝借します。

お酒のデータ(数値)は、お酒を美味しく感じさせないことと、
売る側、呑ませる側が 自分の舌でお酒を表現できなくなった元凶と捉えているので
公開しておりません。

御意。

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